魅力的な街づくりに貢献するコミュニティのあり方とは?

ポラスグループでは、早稲田大学との産学連携で「コミュニティによる街づくり」に関する共同研究を進めています。

これまでにポラスグループが開発した分譲地の管理組合へのヒアリングを通じて、コミュニティ形成に関する取り組みや現状の課題を見える化。

魅力的な街づくりに貢献する汎用性の高い手法を検討することで、最終的には郊外市街地の維持再生に向けた街づくりの指針を策定しようというものです。

2月14日、中央グリーン開発において行われた調査報告会後に、双方の関係者に集まってもらい、今回の調査内容を踏まえた座談会を行いました。

早稲田大学
建築・まちづくり リサーチ・ファクトリー
岡村 竹史

(早稲田大学リサーチイノベーションセンター主任研究員)

早稲田大学
建築・まちづくり リサーチ・ファクトリー
林 書嫻(同研究助手)

中央グリーン開発株式会社
戒能 隆洋

(取締役 事業部長)

小林 雄一

(部長 本店・和光事業所拠店長)

小林 亮一

(部長 千葉支店・船橋営業所拠店長)

新しい価値観に基づいた街づくりの指針に役立てたい

――ポラスグループと早稲田大学が共同研究を行うことになった経緯と、この研究の目的をお聞かせください。

岡村:「人口減少」「少子高齢化」「空き家増加」など、これから日本で顕著になってくる社会問題を考えるにあたり、新しい郊外のあり方を模索していかなければならないとの思いから、2017 年から協議を始め、2020 年度に共同研究がスタートしたのですが、そんな最中、コロナ禍により社会情勢が一変しました。

新しい価値観に基づいた街づくりの観点からも、この研究の意義はさらに深くなったと思います。

小林亮:私たちとしても、住宅を販売し終わったあと、そこに暮らすお客様の本音を収集しきれていないという思いがありました。

今回集まったご意見をもとに、土地を買い、開発する前の段階からコミュニティ形成のモデルを構築することができれば、分譲地の特徴に則したコミュニティを自然とつくりあげることができるようになると期待しています。

小林雄:住宅を販売する側の私たちが直接お客様にご意見を伺うと、なかなかネガティブな要素は言いにくいものです。

今回は第三者の立場で早稲田大学さんがヒアリングし、実際に住んでいる方々の本音を聞き出せたということに意義があると思います。

岡村:実際に話を伺ってみると、コミュニティの中心になっている管理組合の方々の意識の高さに驚かされました。街づくりへの熱量や知識レベルを感じるにつけ、この方々の存在こそがポラスさんのブランド化につながっているのだろうというのが、第三者としての率直な感想です。

:私の母国の台湾には、戸建住宅の分譲地を単位としたコミュニティを形成する概念があまりないので、非常に興味を持って今回の調査に取り組みました。

日本の分譲地では、街並みとしての景観を大切にする住民が多いことに驚かされました。

自然と交流が図れる場を創出し、コミュニティに伴走する姿勢を

――今回、ポラスの6つの分譲地でヒアリングを通じ、コミュニティ形成がうまく機能している実例とともに、課題も浮き彫りになりました。

小林亮:ご入居時は皆さんが自分たちのコミュニティをつくり、守ることに意欲的ですが、年月が経過し、それぞれの環境や嗜好に変化がみられると、中にはその気持ちが変わってしまうご家庭も出てきます。

コミュニティを維持していくことは確かに大切ですが、そう感じていないご家庭も含め、誰もが疎外感を感じることなく暮らし続ける環境づくりは、どの分譲地でも共通の課題だと感じました。

岡村:例えば、規約から外れた建て替えをしてしまうという問題は今後、多くの分譲地で発生しうる問題です。これを厳しい制度を設けて防ぐ方法もありますが、「建て替える前に相談してください」という緩やかな仕組みをつくり、管理組合が地元や近隣と調整を図りながら進めるという方法も考えられます。

戒能:コミュニティを健全に維持するために私たちができることは、住民同士のコミュニケーションの場を重視し、それに向けた開発を行うことだと思います。

思いきって公園をど真ん中に据えた分譲地をつくってもいいかもしれません。

コミュニティを育む場の創出と、お客様に伴走していく姿勢が大切だと思います。

「住まい価値創造」を体現する
仕組みづくりに繋げる

――これからのコミュニティのあり方、理想の形は、どのようなものだとお考えですか。

岡村:ポラスさんの素晴らしいところは、住宅を「売って終わり」というのではなく、住んだ後のことも見据えてコミュニティづくりを捉えていることだと思います。

ただ事業者として、どこまで深くコミュニティに関わるのかという判断は難しい。

とても上手なコミュニティ運営ができている分譲地で「ポラスさんにどんなことをサポートしてもらいたいですか」と尋ねたところ「自分たちでやっていけるので、特に必要ありません」という回答が返ってきた例もありました。

そんな自立したコミュニティの姿は、ある意味理想的かもしれません。

小林雄:一方で、管理費の中から私たちがいくらかお金をいただき、しっかりと運営の仕組みをサポートするスタイルを希望する分譲地もあります。どちらが正解かということではなく、コミュニティの独立性と事業者の関わり方のバランスをとりながら、良好な関係性を構築することが大切だと思っています。

戒能:コミュニティと行政との関係を上手に構築していくことも重要です。

そこに暮らす人が幸せを感じられるコミュニティが増えれば、その自治体の価値を上げることにも貢献できる。

「ここに住めば、こんなにいいことがある」という、資産価値の落ちない街、ハートがある街づくりを、自治体のイメージアップに活用してもらいたいですね。

岡村:自治体との関係構築という意味では、今回のような客観的な調査が、コミュニティの存在意義を高めるファクターになるでしょう。

私たちとしても調査によって得られた知見をいかに実装していくかをテーマに、ポラスさんが掲げる「住まい価値創造」という理念を体現するための仕組みに発展させるべく、今後も研究を続けていきたいと思います。

最新取組み事例紹介

この春に入居完了予定の分譲地では、開発当初から新たな住まい価値を創造する様々な取り組みを行っています。

グランマーレ船橋二和向台 カームライフ(2021年分譲 全62邸)

取組み① 雨水貯留施設の上部に公園を設置

グッドデザイン賞2021受賞

本来なら無機質なコンクリートで圧迫感のある雨水貯留施設を地下化し、上部に公園を設置。

分譲地と地域住民の交流が自然と生まれる場となっています。

取組み② カーシェアリング導入(入居者限定サービス)

分譲地の入居者だけが利用できるカーシェアリング。

スマートフォンで簡単に予約から施錠・解錠まで可能。

ちょっとした買い物やお出かけに活用されています。

取組み③管理組合の設立

景観・防犯防災・コミュニティに関することを住民が自ら維持管理する管理組合を設立。

コロナ禍を考慮しオンラインでの管理組合説明会を開催しました。

中村 高志

(CSV 推進室 コミュニティ企画係)

カーシェアリングは活用度も高く、管理組合の収益にもなります。管理組合運営では弊社が会計を請け負い、負担軽減をしていきます。これから皆さんと共に街の発展が楽しみです。


引用元
情報誌スマイリング 2022春号

PAGE TOP